ケータイ・スマートフォンジャーナリストの石川温氏が注目するアプリを紹介。ここでは、『販促会議』2013年5月号の記事を掲載します。
石川 温(いしかわ・つつむ/ケータイ・スマートフォンジャーナリスト)
1999年に日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社。『日経トレンディ』編集記者を経て03年に独立後、ケータイ・スマホ業界を中心に執筆活動を行う。メルマガ『スマホ業界新聞』(ニコニコ動画)を配信中。
NTTドコモ「ショッぷらっと」
ここ最近、流行のキーワードとして取り上げられているのが「O2O」だ。「Online to Offline」。ネットでの情報発信から消費者をリアルの店舗に誘導するという試みだ。
NTTドコモが本腰を入れて取り組み始めたO2O展開が「ショッぷらっと」というサービス。ユーザーは対応アプリをスマホにインストールした後、渋谷などの街中で、アプリを起動する。すると、対象エリア内で来店ポイント(star)を獲得できるお店がすぐに分かる仕組みだ。消費者は、情報を頼りに店舗を訪れる。店舗内でアプリが起動していたら、来店ポイントが獲得できるようになっている。
アプリが、ユーザーが店舗内にいると確認する手立てとして利用しているのが「音」だ。店舗には、人間が聞き取れない音を発するスピーカーを設置する。ここから出力される音には、店舗を識別するコードが割り振られており、スマホでこの音を聞き取った後にネットにアクセスしてデータベースに問い合わせ、ユーザーがどの店にいるかを確認し、対象の来店ポイントを送信する。
ユーザーは、どこかにスマホをタッチさせる、あるいはQRコードをカメラで読み取らせるといった煩わしいことをすることなく、単にアプリを起動するだけでいい。「音」を利用するため、かなりピンポイントで情報を配信できるのが特長だ。スピーカーからは半径10m程度しか音を飛ばさないことができる。つまり、一つの店舗だけで、来店ポイントの付与もできるし、複数の店舗が並んでいても、それぞれの店舗で違ったポイントを付与することも可能だ。
大型のデパートなどで、複数の店舗がポイントを付与することで、消費者を回遊させることもできる。ショップ側はポイント付与だけでなく、セール情報やクーポンの配信もできる。もちろん、どんな属性(性別、居住地域、年代など)のユーザーが訪れたかのデータを取得することが可能だ。現在はトライアルサービスだが、渋谷地区を中心に約445店舗(3月14日現在)で利用できる。
ドコモユーザーだけでなく、KDDIやソフトバンク、さらにはiPhoneユーザーでもアプリを使える。この手のO2Oサービスは、ショップ単体や広告会社などでも取り組めるが、普及させるという点では難しい面もある。今回、NTTドコモが名乗りを上げたことで、あらかじめ端末に対応アプリをインストールしておくという施策ができるため、一気にユーザーを増やすこともできる。
クーポンを配信する側も、ユーザーが多い方が効果は見込める。そういった点でも「ショッぷらっと」の期待値は大きいと言えそうだ。
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